『スマホ脳』:人類の進化とテクノロジーのギャップ

こんにちは、MOMO(@amemomo_edit)です。
本日は、『スマホ脳』(新潮社、2020年)という本について話したいと思います。AIが身近になった昨今、デジタルデバイスの利用方法を改めて考えていきましょう。

自分の時間やお金が知らずと「ハック」されているのって怖いよね

もっと怖いのは「習慣化」しているとそれに気づかないことなんだ

精神科医と考える「スマホ依存」

本書は2020年頃に出版され、コロナウイルスの流行が始まった時期と重なっています。Kindleでダウンロードしていたものの、ようやく読むことができました。

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この本の著者は、アンデシュ・ハンセンさんです。
スウェーデンのストックホルム出身で、国民的人気の精神科医です。ストックホルム商科大学でMBAを取得し、その後、カロリンスカ医科大学で医学を学び、精神科医となりました。他にも、一流の頭脳や最強の思考法など、多くの世界的ベストセラーを生み出しています。

この本では、スマホが人体にどのような影響を与えているかを精神科医の立場から説明しています。
特に、若者や精神科を受診する人の増加について、スマホの依存性が関連していると指摘しています。たとえば、アルコールやタバコのような依存性の強い物は年齢制限がありますが、スマホにはそれがありません。

興味深い点として、IT企業のトップや研究者が自身の子供にスマホを持たせない、あるいは特定の年齢になったら持たせるといったルールを設けているという話があります。これは、その業界に携わっているからこそ、スマホがもたらす危害について理解しているからだと思います。

睡眠時間は減っており、先進諸国のほとんどで、睡眠障害の治療を受ける若者がこの10年で爆発的に増えている。例えばスウェーデンでは、眠れなくて受診する若者の数が2000年頃と比べて8倍にもなった。

アンデシュ・ハンセン. スマホ脳(新潮新書) (p.10). 新潮社. Kindle 版.

なぜ今こそ「デジタル・デトックス」が必要か

また、著者は、科学的な研究が結果を出すまでには3から4年かかると指摘しています。そのため、2020年の現象が研究結果として出てくるのは2024年頃だと考えられます。
COVID-19が人間にどのような影響を及ぼしたかについての研究結果は来年頃から少しずつ明らかになるでしょう。
また、最近ではGPTなどの新しい技術が登場しており、これらが人類にどのような影響を与えるかについての議論が盛り上がるはずです。

つまり、デジタルデバイスやAIの利用は我々の生活に大きな影響を与えていますが、その影響を正確に理解するには時間がかかるということです。それゆえに、自分の健康を守るためにも、デジタルデバイスの正しい使い方を学び、必要であればデジタルデトックスを行うことが大切です。

この書籍では、人類の進化を振り返りながら、著者は私たちの日常生活に影響を及ぼすさまざまな要素について詳述しています。その中でも、主にスマホを中心に常に多くの刺激にさらされている現代社会は、人々に大きなストレスを与え、集中力の維持を困難にしていると指摘します。

つまり強いストレスにさらされると「闘争か逃走か」 という選択しかなくなり、緻密なプレーをする余裕はなくなる。迅速な判断を下そうと「エラーチェックモード」に入った脳にとって、最優先なのは瞬時に問題解決することだ。社会的に緻密な行動ではなく。すると、自分を取り巻く環境内で発見したエラーに激しく反応してしまう。その結果、些細なことでも強い苛立ちを感じるようになるのだ。

アンデシュ・ハンセン. スマホ脳(新潮新書) (p.40). 新潮社. Kindle 版.

身体を置いてきぼりにして進化するテクノロジー

例えば、古代は草むらが動いた時、それが食物か、それともライオンなのかを即座に判断することが生存に直結していました。しかし、古代に命を救った行動は、現代社会においてはADHDや発達障害といったむしろネガティブな形で診断されることすらあります。

このことから、著者は社会の変化が人間の体や心と完全にマッチしていない、という見解を示しています。
テクノロジーが驚異的なスピードで進化していく一方で、人間自体の進化はまだアナログな部分を残しており、その遺伝的な特性からはなかなか離れられていないとのことです。
しかし、これを日常的に理解している人はどれほどいるものなのでしょうか。

さて、本書では著者が示す興味深い視点の一つとして、FacebookやSnapchat、Instagramを運営する企業が、私たちの脳の報酬系を利用して成功している点が挙げられています。

研究を通して見えてきたのは、いい加減な設定のパソコンがハッキングされやすいのと同じように、私たちの脳もハッキングされる可能性があることだ。賢い企業はとうにそれをやってのけている。私たちの注目を奪う製品を生み出すことによって。ポケットからスマホを取り出すたびに、自分の意思で取り出したと思っているならそれは大間違いだ。フェイスブックやスナップチャット、インスタグラムを運営する企業は、私たちの脳の報酬系をハッキングすることに成功したのだ。10年で全世界の広告市場を制覇したほどの成功ぶりだ。

アンデシュ・ハンセン. スマホ脳(新潮新書)(pp.13-14). 新潮社. Kindle版.

私自身も、過去の自分が子供の頃に比べて、書籍などに没頭する集中力が低下していると感じます。スマートフォンなどから絶えず通知が届く現代社会では、我々の集中力が削がれ、時間が分断されます。

EUにおける米テック企業の規制:選択の自由を守る

しかし、個々の権利を重視し、規制によってデジタル社会を管理しようとする試みもあります。
例えばEUでは、GoogleがAndroid端末メーカーに対して特定のアプリのプリインストールを義務付けた行為が独占禁止法に違反するとして罰金を課した事例があります。

法規制が全ての解決策になるわけではありませんが、企業の利益のために人々の健康や自由が損なわれていると判断された場合、規制の導入が必要だと考えられます。この観点は、今後のデジタル社会の議論において重要なテーマとなり得るでしょう。

私たちは、スマートフォンやソーシャルメディア、広告といった現代のテクノロジーが私たちの生活をどのように変えているのか、常に考察し続けるべきです。
その結果、私たちの時間や集中力が、不必要な刺激や情報の過剰によって分断されることなく、自由に使えるようになることを期待すべきでしょう。脳は「ハック」されるべきではないのです。

また、私たち個々人も自身の行動や習慣を見直すことが重要です。デジタルとの付き合い方を改めて考え、私たちの健康や自由が損なわれないようにするためには、何が必要かを自問自答するべきです。

現代社会はますますデジタル化が進む一方で、その中での生き方をどうするかは、これからも私たちが考え続けるべき課題となります。そして、その解答を求める過程自体が、私たちの成長と進化に寄与することでしょう。

私たちは、デジタル化の波に飲まれる前に、その影響を理解し、自分たちの生活に適切に組み込む方法を考えなければなりません。それこそが、本書を読んで感じた最大の教訓です。

ボイシーでも話しているので、聞きたいかたは参考にしてください。

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